2012年8月4日土曜日

「CO2削減とイノベーション」研究会について



 

magiccでは、「CO2削減をいかにイノベーションに結びつけるか」を研究テーマとして、年に5-6回のペースで研究会を開催しています。
地球温暖化とCO2削減が今後、日本経済や企業にどのような影響をもたらすのか。CO2削減を通じて、日本、および日本企業が、戦略的に日本国内に省エネ・低炭素社会のイノベーションや、未来の成長エンジンとなるイノベーションをどのように起こしていくのか。そのような問題意識に対して、各界より講師を招いてお話を聞き、産学官連携して融合的、学際的な視点で研究活動を深めていくことがその目的です。今後、magiccHP上でも、過去に開催された研究会の内容を、少しずつ紹介していく予定です。



研究会発足の経緯 

CO2削減とイノベーション」研究会は、東京大学の金子祥三氏(生産技術研究所特任教授)、三菱重工業㈱の黒石卓司氏(原動機事業本部次長/現・MDS代表取締役社長)、そして一橋大学イノベーション研究センターの米倉誠一郎(IIRセンター長)の3名が発起人となってスタートした研究会です。当時、米倉は経済産業省地球温暖化委員会の委員をつとめており、火力発電の専門家である金子氏、黒石氏とともに、最大のCO2排出源である火力発電をめぐるCO2削減のあり方を考えよう、というのがその発端でした。20095月、上記2大学と1社、さらに日本経済新聞社を加えて、産学連携共同研究会としてキックオフ・ミーティングを行いました。

その後、テーマを火力発電に絞ることなく、地球温暖化や日本のエネルギー政策などを広く議論する場にしたいという考えから、研究会の方向性を拡大させました。CO2削減をキーワードに、さまざまな方面からゲストスピーカーを招き、2年間で9回の研究会を開いて、各専門家の知見に学びつつ、議論を深めてきました。そして、その中間報告として20103月、約500名の一般参加者を集めて、シンポジウム「CO2削減と日本のイノベーション」(日経ユニバーシティ・コンソーシアム)を開催し、CO2削減と技術革新、CO2削減と国家戦略、それぞれの観点から研究会の成果を発表しました。


内閣府「最先端・次世代研究開発支援プログラム」との連携

 201010月、イノベーション研究センターは、グリーンイノベーション等の推進を目的として創設された、内閣府「最先端・次世代研究開発支援プログラム」に採択されました。研究代表者は青島矢一(IIR准教授)で、テーマはCO2削減と産業発展の両立を目指した企業経営・グリーンイノベーション・制度の探求」です。CO2削減と産業発展というのは、一見すると相矛盾します。しかし、環境関連産業など、この矛盾を解決するような新たな産業を創出し、経済的な付加価値を増大させるような形でそれを発展させていくことができれば、両立することは決して不可能ではありません。本プログラムでは、このような問題意識のもと、研究活動を進め、その成果を社会発信していきたい、と考えています。
 
そして、これにともない、「CO2削減とイノベーション」研究会も、本プログラムの一環として再スタートすることになりました。奇しくも、再スタート後まもなく、東日本は大震災に見舞われ、日本では電力需給の問題が非常に深刻になりました。そこで、2012年度以降の研究会活動では、電力供給側と電力需要側、それぞれの立場から技術革新や仕組み構築に取り組んでいらっしゃる方々をゲストスピーカーに招いて、CO2削減を念頭に、日本のエネルギー計画について再考するところから、まず議論を始めています。

(文責:藤井由紀子)



【研究会内容一覧】  第Ⅰ期 2009.5-2010.3

○第1回研究会 2009527(一橋大学商学研究科・産学連携センター
 三菱重工業㈱原動機事業本部サービス統括部 次長 黒石卓司 氏
 IIRセンター長 米倉誠一郎
  「CO2削減をめぐるイノベーションについて」
   ※IIR、東京大学生産技術研究所、三菱重工業、日本経済新聞社による
    産学連携共同研究会のキックオフ・ミーティング

○第2回研究会 2009625日(木)  一橋大学商学研究科・産学連携センター
 東京大学生産技術研究所 特任教授/元・三菱重工業㈱取締役技師長 金子祥三 氏
  「火力発電技術とCO2

○第3回研究会 20091113日(金) 佐野書院・マーキュリータワー
 新日本製鐵㈱ 常務執行役員 青木宏道氏
  「地球温暖化における国際公平性と確保と鉄鋼業の取り組みについて」
 三菱商事㈱ 環境・水事業開発本部 排出権事業ユニットマネージャー 中村剛 氏
  「三菱商事の排出権ビジネス―ポスト京都と国内中期目標―」

○第4回研究会  2010128日(木)  一橋大学商学研究科・産学連携センター
 NPO法人環境エネルギー政策研究所 代表 飯田哲也 氏
  「なぜ日本の環境政策は「3週遅れ」のガラパゴスなのか?
    ―モード3~リアリティに碇を降ろせ 環境エネルギー政策の全面的アップデートに向けて」

○第5回研究会  2010225(一橋大学商学研究科・産学連携センター
 経済産業省 清水淳太郎 氏
 「国際交渉の状況と国内対策の検討の視点」
 産業技術総合研究所  河尻耕太郎 氏
  「大局的なCO2排出量の削減に向けた太陽電池のグローバルサプライチェーンマネジメントの戦略と課題」

○シンポジウム 2010330日(火) 一橋記念講堂
「日経ユニバーシティ・コンソーシアム: CO2削減と日本のイノベーション」
基調講演① 岡本アソシエイツ代表/外交評論家 岡本行夫 氏
「国際社会の日本の立ち位置と環境問題」
基調講演② 三菱重工業会長 佃和夫 氏
CO2削減と日本のイノベーション」
パネルディスカッション①
CO2削減と国家戦略」
      江藤学、山内弘隆、中村剛、飯田哲也、澤沼裕、金子祥三 (以上、パネリスト)
      米倉誠一郎(モデレーター)
パネルディスカッション②
CO2削減芸術とイノベーション戦略・政策」
      青島矢一、赤羽雄二、松本毅、黒石卓司、藤原洋 (以上、パネリスト)
      米倉誠一郎(モデレーター)

○第6回研究会 2010727(一橋大学商学研究科・産学連携センター
 東京大学 生産技術研究所 特任教授 金子祥三 氏
 三菱重工業㈱ 原動機事業本部 サービス統括部 次長 黒石卓司 氏 
  「欧州におけるCO2削減の現状」
 
○第7回研究会 2010916() 一橋大学商学研究科・産学連携センター
 元・東京電力副社長 竹内哲夫 氏
  「原子力の現状と将来ビジョンについて」

○第8回研究会 20101119(一橋大学商学研究科・産学連携センター
 日本IBM㈱ スマーター・シティ技術戦略担当 執行役員 岩野和生 氏
  「CO2削減とスマートグリッド:IBMSmarter Planetの取り組みから」

○第9回研究会  2011224()   一橋大学商学研究科・産学連携センター
 三菱重工業㈱ 原動機輸出部 次長 河本英士 氏
  「CO2削減の一翼を担う地熱発電の現状は・・・」



【研究会内容一覧】  
第Ⅱ期 2011.5-


○第10回研究会 2011527日(金)  六本木アカデミーヒルズ
 東京大学生産技術研究所 特任教授 金子祥三 氏
  「大震災の教訓とエネルギー問題の課題と解決策」

○第11回研究会 2011624日(金)  一橋大学商学研究科・産学連携センター
 村上憲郎事務所代表/前グーグル日本法人名誉会長
 慶應義塾大学大学院特別招聘教授/会津大学 参与  村上憲郎 氏
  「スマートグリッドが切り拓く 新生スマートニッポン」

○第12回研究会 2011817日(水)  一橋大学商学研究科・産学連携センター
 NPO法人地中熱利用促進協会 理事長 笹田政克 氏
  「地中熱利用の普及に向けた課題」

○第13回研究会 2011121日(木)  六本木アカデミーヒルズ
 ㈱ジオパワーシステム 代表取締役 橋本真成 氏
  「日本ブランド地中熱利用換気システム」

○第14回研究会 201227日(火)  一橋大学商学研究科・産学連携センター
 ソーラーフロンティア() 執行役員 栗谷川悟 氏
  「太陽光発電の現状と可能性」

○第15回研究会 201229日(木)  一橋大学商学研究科・産学連携センター
 三菱重工業() 原動機事業本部 ガスタービン技術部長 正田淳一郎 氏
  「高効率・高温ガスタービンの開発と工業化」
  
○国際ミニシンポジウム 20123月27日(火) 一橋大学佐野書院
Sustainable Growth and Asian Energy Policy
Shozo Kaneko (Professor, Institute of Industrial Science, the University of Tokyo)
    “Japan's energy policy
   Hidefumi Nishigai (Engineer's Power to the Planet
    “Eco-Friendly Product Development
   Chetan Singh Solanki
 (Associate Professor,
Department of Energy Science and Engineering,Indian Institute of Technology, 
Bombay, India)
    “Energy Scenario and Renewable Energy Policy of India”
   Kei Kawase (Senior Manager, Science & Technology, IBM Research - Tokyo)
    “IT Evolution for Smarter Planet
   Patnaree Srisuphaolarn
(Lecturer, Department of International Business,
Logistics and Transport,Thammasart Business School, Thailand
    “Energy and sustainable business
   Yaichi Aoshima (Professor Institute of Innovation Research, Hitotsubashi University)
    “Balancing Energy Supply, GHG Reduction, and Industry Competitiveness
   Naohiko Wakutsu and Yaichi Aoshima
(Postdoctoral Fellow; Professor, Institute of Innovation Research, 
 Hitotsubashi University)
    “Energy and sustainable business(2) R&D and Emissions Trading

○第16回研究会 2012510日(木)  一橋大学商学研究科・産学連携センター
 ㈱デンソー 研究開発1部 DPマイクログリッド開発室長 金森淳一郎 氏
  「マイクログリッドにおけるデンソーの取り組み」

○第17回研究会 2012614日(木)  一橋大学商学研究科・産学連携センター
 ()電力中央研究所 社会経済研究所<エネルギー技術政策領域> 
  主任研究員 朝野賢司 氏
  「固定価格買取制度の展望と課題」