2012年6月21日木曜日

新日鐵君津製鉄所訪問(1)(青島矢一)

2012年6月19日

新日鐵の君津製鉄所を訪問しました。メインの目的は、先日講演を聞いた廃プラスチック処理工程をこの目で見ること、副次的な目的は学生に日本のものづくりの底力を感じてもらうことです。教員4名、学生18名での訪問でした。

唯一写真撮影が許された第4高炉前で記念撮影

工場に到着後、昼食をとり、まずは、廃プラのリサイクルを含めた、君津製作所における省エネ、環境対策の全体に関するビデオと説明を受けました。工場内でのエネルギー・資源の有効利用が徹底的に追求されていることがわかります。


水は基本的に100%再利用、製造工程で発生するガスや蒸気は、加熱用の燃料や発電用の燃料として利用されています。


確か蒸気塔

具体的に書きますと、君津製鉄所内で発生するガスの内、55%が製鉄所内で燃料として使用され、45%が東電との共同火力発電所で使用されています。この火力発電所の発電能力は55万KWあります。原発の半分くらいの能力です。共同火力発電所では、製鉄所からの副生ガスに加えて、その1/3に相当する(25%分)重油を購入して発電しています。発電した電力は東電3、新日鐵4の割合で引き取っています。


この共同発電所に加えて自社保有の12万KW分の発電設備があります。ピーク時に東電から電力を買うことはあるとのことですが、基本的に製鉄所内で使用される電力は全て、製鉄所内で発生するガスや蒸気でまかなっている計算となります(自家消費以上に発電しています)。


君津製鉄所は立派なスマートシティです。


新日鐵の廃プラ処理の特徴は既存のコークス炉を使用することにあります。自治体から回収されたプラスチック容器が、事前処理工程(前工程)で小さなペレット状に減容成形され、石炭と一緒に熱分解工程であるコークス炉(後工程)に投入されます。


コークス炉では、プラスチックが熱分解されて、コークス(20%)、ガス(40%)、炭化水素油(40%)となります。発生したガスは、発電所に送られて発電用の燃料として使われます。炭化水素油は化学原料となり利用されます。そのための化成工場が廃プラの事前処理工程とコークス炉の間に建設されています。見事なまでに製鉄所内で自己完結性を追求しており、本当に関心します。


見学は、廃プラスチックの事前処理工程から始まりました。熱分解工程は通常のコークス炉なので見学しませんでした(石炭と混ぜて廃プラを投入するので外からは全く識別できません)。


自治体から回収された容器包装プラスチックは大きなさいころのようなキューブ状に梱包されて運び込まれます。自治体によってキューブに加工する機械に違いがあるようで、梱包方法に違いがあるのがわかります。それゆえ梱包をほどくために人手がかかるという説明でした。このあたり標準化しておけば処理が簡単になるのに。こうした無駄な差別化は日本でよく見られる現象です。


工場内は廃プラのため少々甘い生ゴミのような臭いがしました。夏になると5日以内に処理しないとウジがわいてしまうとのことでした。


ばらばらにされた廃プラは事前処理工程に投入され、裁断、不純物(金属など)の除去、減容処理を経て、小さなペレット状になります。自治体で基本的な分別はしているものの、まだ不純物が含まれています。ライターのように発火するものは必ず除去しなければいけないので(引火したら大変)、人手による除去と機械による除去が行われます。今回見学したラインは機械による除去でした。磁石を使ったり、ブロアで吹き飛ばしたりと、いろんな方法で不純物を除去します。減容処理するところでも外部から大きな熱を加えることはなく固まるそうです。摩擦熱で自然に溶けるプラスチックによって固まるとのことでした。このあたりも省エネです。


減容処理工程をみた後は、学生向けに、バスでコークス炉の横を通り、最も大きな第4高炉の前で写真撮影。続いて薄板の熱延工程を見学しました。何度みてもダイナミックな工程に感動します。圧延工程に運び込まれたスラブ(鉄の塊)は副生ガスを燃料として使って1000℃以上に再加熱されます。遠くで見学していても汗が出てきます。冷却水による大量の水蒸気がダイナミックな工程を演出しています。

第4高炉


今回のスラブは、いくつもの圧延工程を経て、厚さ3mm以下で長さ550mに延ばされ、一気に巻き取られていました。どんどん、どんどん、引き延ばされていく姿をみていて、韓国の明洞でみた龍髭飴を思い出しました。



見学が終了して学生が帰ったあと、肝心の廃プラ処理技術開発に関するインタビュー調査を行いました。学術的にも大変興味深い話を聞きました。それは次の(2)で。

(青島矢一)