2012年4月27日金曜日

自然エネルギーの買い取り価格について(2)(青島矢一)

2012年4月27日

地熱発電の電力の買い取り価格は、1.5万kw未満が42円/kwh、1.5万kw以上が27.3円/kwhとなっていました。少し驚きました。


太陽光の場合とは異なって、地熱発電は、国内産業が長期的に競争力を持ちうる可能性があるので、短期的な国民負担で、普及を促進することに一定の正当性があると思っています。


しかし、普及を促進する上で、42円/kwhの買い取りが本当に必要なのかは、疑問です。日本で一番大きな八丁原の発電所で11万kwですから、1.5万kwというとそこそこの規模です。僕が九州で見てきたホテルの発電所などは、1000-2000kwくらいですから、温泉発電などは全て、42円/kwhの買い取り対象となります。


42円/kwhという高い買い取り価格は、地熱発電の普及が進まない理由のかなりの部分が経済性にあるということでないと正当性をもたないと思います。しかしこれまでにも書きましたように、有価証券報告書ベースの計算では、八丁原発電所の発電単価は7円/kwh程度でしたし、アイスランドではおそらく2-3円/kwhくらいです。


小規模のホテルの発電所でも20円/kwhくらいの買い取りであれば、採算が合うといっていました。しかも管理体制などはかなり「竹槍」的でしたから、もっと効率的に運営することが可能だという印象をもちました。


地熱が進まない理由は、むしろ、環境との調和の問題や、地元の人たちの反対にあると思います。特に民間が運営する小規模の地熱発電所の場合には、むしろ、大儲けできるような買い取り価格は、地元の人たちとのコンフリクトの種になると思います。


いくら買い取り価格が高くても、何億、何十億という投資ができる人は限られているわけです。しかし、地熱という資源は、おそらく共有物であるという意識があるのでしょうから、特定の人だけに大儲けするというのは、コミュニティの中ではなかなか受け入れられないのではないかと思います。


買い取り価格を高くするよりは、地元の人たちがみな恩恵を受けられるような仕組みを考えることが先だと思います。そちらが整えば、買い取り価格がもっと低くても、普及するだろうと個人的には思っています。


このあたりについては僕もまだまだ調査が足りないのですが、普及を妨げている要因を、もっと現場に根ざして理解することが、政策決定には必要だと思います。


今回の買い取り価格決定をみていると、政策立案プロセスを根本から見直す必要があるのではないかと思えてきます。

(青島矢一)