2012年3月24日土曜日

振発新エネルギー訪問(2)(青島矢一)


321日 

振発がPV産業に進出した経緯を聞きました。質問に応じてくれたのは、輸出を担当する邢さんと、設計部長の李さんです。


一番左が邢さん右から二番目が市政府の曹さん

振発が新エネルギー産業に進出したのは2003年のことです。元の企業はエンジニアリング企業で(そちらは今もやっている)、PV産業への進出にともない、新たに振発新エネルギーを設立したわけです。当初は、PVの街路灯や、小さな独立の発電システムから始めまたそうです。


PV産業への進出のきっかけはやはり尚徳(サンテック)です。サンテックの成長を見て事業機会があると判断しています。最初はサンテックのパネルをつかって発電設備をつくっていました。


振発は、2007年、本格的に発電所事業に進出することを決めます。最初の2年間は、市場調査を行っていました。そして2009年から本格的に事業を始めます。サンテックとの提携を模索しましたが、サンテックが既に巨大企業であり、良い条件での提携がまとまらなかったので、トリナソーラーと上海に投資会社(JV)を設立しました。2010年下期のことです。当初は振発が8割、トリナが6割の出資比率でしたが、2010年は振発6割、トリナ4割となっています。


実際に大型の発電所を最初に建設したのは2010年で、20MWの発電所が最初です。江蘇省の北で、中国の国有企業からの発注です。建設期間は3ヶ月でした。


振発の発電所建設の流れは以下のとおりです。

2009年(<10MW
2010年(<30MW
2011年(<380MW(50MWの発電所が最大)
2012年(300500MW計画)


2011年に急に事業が大きくなったことがわかります。そのおかげで、現在、近くに本社ビルを建設しています。動きが速いです。


発電所建設にはいくつかのパターンがあるということです(このあたり様々な場所で聞いたのですが、ちょっとずつ話が異なるので、別途どこかでまとめます)。


1つめは、5つある国営の発電企業(これを電力会社と呼ぶので、送電企業と区別がつきにくく、ちょっとわかりにくかったです)から直接発注を受けるケースです。発電企業は主として火力発電所などを所有して、国営の送電企業に電気を販売していますが、一定量は再生可能エネルギーで発電しなければならないことになっているようです(RPS法のようなものだと思います)。そこで、PV発電所への投資を行います。


この場合には入札となります。入札の仕様には、発電コスト、工期、アフターサービスなど様々な条件があります。振発のようなエンジニアリング企業だけでなく、サンテックのようなモジュール企業も入札するそうです。


ただしモジュール企業は、システムエンジニアリングが得意ではないので、しばしば、コストの見積もりを誤り、落札しても赤字になってしまうことがあるそうです。その場合には、落札した企業から、振発に話が持ち込まれることもあります。


もう1つの受注パターンは、子会社である上海の投資会社(振発とトリナの合弁)からの発注を受ける場合です。この時には入札とはなりません。上海の投資会社が事前に発電企業と話をつけた上で、投資会社(子会社)が親会社に工事を発注することになります。なので、入札の必要はないのだそうです。


発電システムの変換効率は、モジュールの変換効率の6080%とのことです。モジュールが16%であれば、10%から13%くらいといったところです。トラッキングシステムを導入すると効率は1520%向上するということです。


PV産業発電所のコストの50%から60%はモジュールです。モジュールのコスト割合が非常に高いです。インバーターなどの電気系が20%から30%です。材料や部品を除いた建設にかかる費用が10%程度です。モジュールコストの多くがセルのコストで、セルのコストの多くがシリコンウェハのコストですから、こうしてみると、とにかくこの産業は(現状では)シリコンの値段が鍵となっています。


発電所のワット単価は12元から15元です。日本円にして150円から200円といったとこです(土地代が5元/wといっていたようにも思うのですが、はっきりしません。後で確認します)。kw単価では15万円から20万円。日本の家庭用の太陽電池の価格が、工事費込みで30万円台後半/kwから70万円/kwくらいですから、事業用と家庭用でどのくらい異なるのかわかりませんが、半分以下といったところでしょうか。

日本がエネルギー問題の解決だけを目的とするなら、中国企業に進出してもらった方がいいです。一方、産業政策を絡めて、日本企業を保護しようとしても、全量固定価格買い取りが始まれば、限界があるように思います。PV産業を日本の重要産業として促進するのであれば、次世代技術開発を加速化するしかないと思います。

(青島矢一)