2012年3月12日月曜日

八丁原地熱発電所見学(青島矢一)


224日:九州電力八丁原発電所見学

九重観光ホテルの地熱発電所を見学した後、九州電力の八丁原地熱発電所へと向かいました。途中の景色がすばらしい。国立公園内にある地熱資源開発に反対する環境省や地元の人たちの気持ちがわかる気がします。特に今の地熱発電所は、お世辞にもきれいとはいえませんので、あのまま建設されてしまえば、確かに景観を損なうことになると思います。



八丁原地熱発電所は日本最大の地熱発電所です。5.5万キロワットのタービン2つで合計11万キロワットの能力をもち、年間で87000kwhの電力を発電しています。原発1基の110の能力があります。

発電所の概要


到着したらすぐに見学コースに入りました。シアター室に先発組がいて(中部電力の人たちだそうです)、そこに合流して、説明を聞きました。


説明員の女性の横に、白いものが詰まった井戸のパイプが置いてありました。蒸気井を通る蒸気は高温なので、不純物は溶けてしまっており問題ないのですが、還元井は温度が下がっているので、シリコンの不純物が内側に積層されて、井戸を詰まらせてしまうのだそうです。それゆえ定期的に洗い流さなければならないとのことです。

詰まった還元井のパイプ


(途中からでしたが)一通り説明を聞き終え、外に出て、発電設備の見学をしました。外は寒いです。勝手に、大分は温かいと思っていたので、想定外でした。


発電所は、いかにも発電所という出で立ちで、九重観光ホテルの発電所は全く別物です。まずは巨大な冷却塔。上から温水が滝のように流れており、外からの空気で冷却するとともに、内部には大きな冷却ファンもあるそうです。

冷却塔

次に見たのが汽水分離器です。蒸気と熱水を分離します。熱水と蒸気の分離はフラッシャーでも行われており(こちらは圧力の違いで分離する)、汽水分離器とフラッシャーの双方から蒸気がタービンに供給されます。それゆえダブルフラッシュと呼ばれています。


汽水分離器
フラッシャー



次にタービン建家内に入りました。二基あるタービンはどちらも三菱重工製です。


三菱重工製
タービン


制御室に人はいません。ここから2kmほど離れたところにある大岳発電所からリモートで制御されています。制御室には大岳発電所の制御室に画像をおくるためのカメラが見えます。


無人の制御室


再びシアター室に戻ってきて、映画を見ました。発電の仕組みがよくわかりました。大きいだけで、フラッシャーがある点(ダブルフラッシュであること)と還元井があることを除けば、九重地熱発電所とほぼ同じ仕組みです。


映画が終了したあと、説明員の人にいろいろと質問しました。ただ一般の見学コースなのであまり詳しいことまではわからないようでした。総工事費は140億円と230億円、管理費はわかりませんが、50人が働いているそうです。110MW50人となると、アイスランドの300MW級の地熱発電所よりも人が多いです(木村さんによれば平日で35人くらいだそうです)。


九州電力の有価証券報告書には、新エネルギー等という区分で発電量(1443百万kwh)と発電費用(9,731百万円)が明記されています(助燃費および蒸気量が20億円かかっているが、それが何かを知りたい)。新エネルギーのほとんどは地熱ですので、これから単純にkwhあたりの発電コストを割り出してみると、6.72円となります。火力に比べても安いです。


八丁原発電所は発電だけを行っており地域暖房などには使われていないとのことでしたので、アイスランドのように暖房も兼ねればさらに経済性は高まると思います。アイスランドの地熱発電の発電単価はおそらく23/kwhだと思われますが、こうした安さも理解できないことはありません。


九州電力の上記発電費用97 億円の内、燃料費が20億、修繕費が36億円、原価償却費が23億円となっていますので、修繕費をいかに下げるかが重要そうです。人件費は63000万円です。

(青島矢一)