2012年2月16日木曜日

KDDIとの共同研究から思うこと(青島矢一)


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今年度は、KDDI研究所と共同研究をしており、1ヶ月もしくは2ヶ月に1回のペースで研究会をしてきました。今日もその研究会でした。


KDDI研究所との関係は、KDDI総研の高崎さんが、僕のところに訪ねて来られたのをきっかけとして始まりました。確か、米国の通信業界に関する分析を、僕に報告してくださったのが、最初だったと記憶しています。




その後、学部の学生とKDDI研究所を訪ねて、KDDI研究所が開発している技術のプレゼンを聞くという機会を設けていただきました。それに対して、学生は、それらの技術を経済価値に転換するための事業アイデアを考え、KDDI関係の皆さんの前で、プレゼンしました。学生のアイデアの中にはなかなかおもしろいものがありました。


これらのことをきっかけとして、KDDI研究所との共同研究が始まりました。共同研究とはいっても、「通信業界を取り巻く技術や市場の変化を俯瞰して、将来の通信事業の姿を描く」といった漠としたもので、毎回、収束しない(けれど、おもしろい)議論を続けているという感じです。


前回は、KJ法を使って、通信業界をとりまく状況の整理を行いました。今回も通信技術の発展と社会や市場の発展が交差することに見えてくる新しい事業を整理するという作業を行いました。



いつもどおり収束しない議論ですが、いくつか、エネルギー・環境産業と通信産業の接点や共通点がみえてきたように思います。


通信技術の発展によって今後起きる予測されることは、様々なシステムの最適化の範囲が拡大して、高いレベルでの効率性が実現されていくことです。そこでは、ローカルに生じている様々な無駄が、システムの広い範囲で効率的に活用され、排除されていくだろうと思います。


エネルギー問題を解決する上での重要な鍵は、エネルギーの創出と消費のバランスを広い範囲で最適化すること(システムの最適化の範囲の拡大)と創出されたエネルギーを様々な形で利用するという合わせ技の工夫(エネルギーの多重利用)にあると思います。


前者はスマートグリッドの背後にある考え方です。


今のような統合化された系統発電の仕組みが登場する前、我々の社会におけるエネルギーの創出と消費は、非常にローカルに分散化されていました。これまでは分散から統合へと進歩してきたわけです。


それが現在再び、統合から分散へと変化しようとしています。しかし今度の分散は、単なる分散ではなさそうです。ICTの進歩のおかげで、分散化された活動は、広い範囲でつなぎ合わされ、統合化されます。技術の進歩によって、分散と統合が同時に実現できるようになるのではないかと思います。


そこでは、最適化をはかるシステムの範囲をどのように設定するか、その中で、いかにしてローカルな無駄を全体システムとして排除していくのかという、システム設計のアイデア勝負になってくるのではないかと思います。


この勝負に日本の企業は勝てるのだろうか。

(青島矢一)